乳腺疾患チーム-Breast disease team-

チーフ

   
石田 和茂
(いしだ かずしげ)
   
講師    
     

 

スタッフ

   
天野 総
(あまの すぶる)
   
助教    
     

診療の特色

センチネルリンパ節生検

少量の放射線源と色素を用い最初に乳房からリンパ液が流れ込むリンパ節(センチネルリンパ節)を探し出し、そこに転移が無い場合それ以上の腋のリンパ節 の切除は不応となるのが、センチネルリンパ節生検です。脇の下の組織の損傷による障害は最小限で、術後の腕の浮腫(むくみ)を1%以下に減らす事が可能です。H22年4月から保 険適応となりましたが、当科ではH11年から臨床研究として開始、既に1,500例を越える患者さんに1%以下の局所再発率(取り残し)で安全に実施してきた実績を誇ります。

ブレストケア外来

日本の平均的乳房温存率は65%程度ですが、未だ乳房を失う患者さんは少なからずいらっしゃいます。また乳房に対して大きめの腫瘍に温存術を実施しても変形が目立つ場合もあります。乳がん治療の進歩による生存率向上により、術後に良好なボディイメージ(人が自身の身体およびそれが他人にどう映るかについての考え方)で生活して頂くことはより重要になってきています。H25年からインプラント(シリコン製人工乳房)を用いた乳房再建が保険適応になったことをふまえ、我々は患者さんの想いを反映し出来るだけ美しい乳房を残す取り組みを考えました。今までの乳腺外科医と再建を担当する形成外科医が別々に患者さんを診察し術式を決めてきたものを、両者が同じ診察室で共に患者さんを診察し方針を決定することで、薬物療法や放射線療法等の今後必要になってくる治療にも支障が無く、お互いがより乳がんを理解し最良の結果になるような新たなとり組みがブレストケア外来です。この科横断的チーム医療の推進によって、形成外科医による整容性(形の良さ)の良さは勿論、乳腺外科医の整容性への意識が高まりました。乳輪や乳房の腋側に6cm程度の切開で、精度の高い画像診断のもと正常乳腺で取り囲んで腫瘍を切除し、周囲乳腺にて欠損を充填・修復、整容性を保ちます。創部の抜糸やドレーン(管)も不要なことが多く3泊4日の短期入院が主流です。

個別化を目指した薬物療法と臨床試験・治験

手術や生検で得られた標本を病理医と共に臨床データと合わせて詳細に検討することにより、患者さんの再発リスク、各種薬物療法の治療効果と副作用、そこに患者さんの希望を加味した最良の術前後の薬物療法を選択、個別化を目指しています。特に分子標的薬を用いた術前化学療法に習熟しており、手術前に顕微鏡レベルでがんが消失している状態(Pathological CR)が50%近くとなり、術後の乳房の整容性と予後(病気の見通し)を著しく改善させることが可能です。

これらの標準的な治療での副作用を抑えた安全な実施はもとより、より有効な治療の開発を目指し国内外の開発治験、医師主導試験にも積極的に参加していおり、その数は東北の乳がん治療専門施設でも抜きんでています。新規薬剤を先取りして使用できる機会を地域の患者さんに提供するとともに、いち早く習熟しより質の良い医療の提供に努めています。

チーム医療

私たちは乳がんと診断された後から、乳腺外科医、看護師、薬剤師からなるチームで患者さんとご家族をサポートしています。乳がんは有効な薬剤が沢山有る反面、患者さんは家庭や社会の中で重要な役割を果たしつつ、玉石混淆の医療情報から価値のある情報を収集しなければなりません。さらに十分な情報があっても治療選択肢が多い分容易には治療法を選択できない、患者さんの価値観により最良の治療が1つでは無い場合が多いのが乳がん治療の特徴です。「チーム医療」を通して医師は最新かつ習熟された手術や薬物療法の治療を提供し、看護師は患者さんが治療に向かう不安な気持ちを同じ目線で観察しより良い環境で治療できるよう問題点を拾い上げ精神的・肉体的なサポートを行い、 薬剤師は薬剤の専門的知識により患者さん一人ひとりに合った投薬プランの作製とより副作用の少ない薬物療法の実践をサポートします。既に10年以上の経験と成果が上がっている我々のチーム医療は、他の施設からも注目されています。