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初期臨床研修プログラム

目標と特徴

卒後初期臨床研修目標を達成した後、基本的手術手技と一般外科治療に必要な外科診療技術を習得する。また、外科サブスペシャルティの特徴も習得させる。座学としてではなく、実地臨床症例を教師とし、体験から自己学習を促進する。外科専門医を目指す者は、2年次に最長11ヵ月の院外外科研修が可能である。

総合目標
  • 外科サブスペシャルティ(消火器、乳腺、甲状腺、小児外科)に共通する外科の基本的問題解決に必要な基礎的知識、技能および態度を習得する。
  • 一定レベルの手術を適切に実施できる能力を習得する。

 

経験すべき検査・手技・治療法
【基礎的知識】
GIO: 外科診療に必要な下記の基礎的知識を習熟し、臨床応用できる。
SBOs:
  • 局所解剖
     手術に必要な局所解剖について述べることができる。
  • 腫瘍学
     (1)TNM 分類について述べることができる。
     (2)手術、化学療法および放射線療法の適応を述べることができる。
  • 病態生理
     (1)周術期管理などに必要な病態生理を理解している。
     (2)手術侵襲の大きさと手術のリスクを判断することができる。
  • 栄養・代謝学
     病態や疾患に応じた必要熱量を計算し、適切な経腸、経腸栄養の投与、管理について述べることができる。
  • 感染症
     (1)臓器や疾病特有の細菌の知識を持ち、抗生物質を適切に選択することができる。
     (2)術後発熱の鑑別診断ができる。
  • 周術期の管理
     病態別の検査計画、治療計画を立てることができる。
  • 集中治療
     (1)集中治療について述べることができる。
     (2)レスピレータの基本的管理について述べることができる。
  • 一定レベル以上の手術( 後述) を術者として行うことができる。

 

【検査・処置】
GIO: 外科診療に必要な検査・処置に習熟し、それらの臨床応用ができる。
SBOs:
  • 下記の検査手技ができる。
     (1)超音波診断:自身で実施し、病態を診断できる。
     (2)上・下部消化管造影:適応を決定し、自ら行うことができる。
     (3)内視鏡検査:上・下部消化管内視鏡検査、術中胆道鏡検査などの必要性を判断し、自ら行うことができる。
     (4)穿刺細胞診( 甲状腺、乳腺) を行うことができる。
  • 周術期管理ができる。
     (1)術後疼痛管理の重要性を理解し、これを行うことができる。
     (2)周術期の補正輸液と維持療法を行うことができる。
     (3)輸血量を決定し、成分輸血を指示できる。
     (4)出血傾向に対処できる。
     (5)血栓症の治療について述べることができる。
     (6)経腸栄養の投与と管理ができる。
     (7)抗菌性抗生物質の適正な使用ができる。
  • 次の麻酔手技を安全に行うことができる。
     (1)局所・浸潤麻酔。
     (2)脊推麻酔。
  • 外傷の診断・治療ができる。
     (1)緊急手術の適応を判断し、それに対処することができる。
  • 手術手技
     下記の手術を術者として行い、手術所見を記載することができる。
1.膿瘍切開 6.小腸・大腸部分切除 11.乳腺・甲状腺生検
2.良性腫瘍摘出 7.鼠径ヘルニア根治術 12.良性甲状腺腫瘍摘出術
3.開腹 8.大腿ヘルニア根治術 13.良性乳腺腫瘍摘出術
4.開腹 9.虫垂切除術  
5.胃瘻・腸瘻造設 10.胆嚢摘出術  

 

経験すべき病態・疾患
【対象疾患】
  • 消化器外科
食道癌 Crohn 病 鼠径ヘルニア 膵癌
食道アカラシア 虚血性腸炎 大腿ヘルニア 原発性肝癌
逆流性食道炎 MRSA 腸炎 腹壁瘢痕ヘルニア 転移性肝癌
食道裂孔ヘルニア 大腸ポリポージス 胆石症 門脈圧亢進症
特発性食道破裂 大腸癌 胆嚢・胆管炎 脾疾患
十二指腸憩室 大腸憩室 胆道癌 穿孔性腹膜炎
胃十二指腸潰瘍 急性虫垂炎 急性膵炎  
胃癌 イレウス 慢性膵炎  
潰瘍性大腸炎 痔核 膵嚢胞  

 

  • 頚部、甲状腺、上皮小体
正中頚嚢胞 Basedow 病 甲状腺腺腫 上皮小体機能亢進症
外側頚嚢胞 橋本病 腺腫様甲状腺腫 上皮小体腫瘍
亜急性甲状腺炎 甲状腺機能低下症 甲状腺癌  

 

  • 乳腺疾患
急性乳腺炎 乳癌 Paget 病 乳管内乳頭腫
乳腺症 乳腺線維腺腫 葉状肉腫  

 

  • 小児外科
腹壁・横隔膜疾患 腸閉塞、急性虫垂炎 誤飲、誤嚥 小児がん
消化管奇形 小児胆道疾患 ヘルニア 小児肺疾患

 

教育に関する行事

(上記スケジュールはあくまで目安であり、変更となる場合があります)

予定スケジュール
  • 手術症例検討会(週2回) : 受持症例の場合はプレゼンテーションを行う。
  • 手術報告 : 通常術後第1回目の検討会で行う。
  • 抄読会( 週1回) : 発表は3ヵ月に1回程度。
  • 死亡症例報告 : 通常術後第1回目の検討会で行う。
  • 病理、死亡例検討会 : 2ヵ月に1回。
  • 内科合同カンファランス : 1ヵ月1回、3グループ。
  • セミナー、招待講演 : 3ヵ月に1回程度。
  • レクチャー : 疾患別に各グループで学生に対して行う。
  • 学会参加 : 希望するもの。

研修評価

研修医は自己評価表( チェックリスト) にて自己評価を行い、自己の研修達成程度を明らかにする。各指導医はその自己評価結果を随時点検し、研修医の到達目標達成を援助する。術者となった症例に対しては詳細な手術所見を記載し指導責任者に提出する。指導責任者による手術症例に関する口頭試問を行い評価とする。さらに研究会、学会発表、論文作成などを行った場合はこれらを総合的に評価する。

研修内容・方法

病棟の診療グループ( 通常中堅医師と助手さらに講師等で成る診療チーム) 毎に2、3名の研修医が配属される。患者の受持医となって診療の実際にたずさわることにより、診療に対するあらゆるレベルでの指導を受ける。受け持ち症例に対しては検査のオーダー、検査結果のチェック、診療録への記載はもとより術前術後の症例検討会、回診ではプレゼンテーションを行う。また、前記した手術手技を1例以上経験し、術後検討会で報告を行い、レポートを提出する。
希望により各グループ間のローテートも可能である。また、このチームには医学部の臨床実習期間中、ポリクリの学生が配属される。高度臨床研修の学生( 6年生) も一時配属される。従って、研修医といえども学生の指導を行わなければならない。
外科専門医取得の明確な意志を持っていれば、2年次に最長11 ヵ月県内外の関連病院で院外研修を行い多くの症例を経験することも可能である。

指導責任者ならびに研修指導医

外科指導責任者:佐々木 章(外科診療科部長)

研修指導医 :水野  大(外科)

その他

認定外科医資格取得について

日本外科学会では「外科専門医」受験資格として、指定施設において「卒後初期臨床研修」期間を含んで「通算5年以上」の修練を義務づけている。したがって、将来外科専門医を取得希望の場合は早い時期に修練開始登録( 外科学会入会不要)する必要がある。研修で経験した症例は登録可能である。

勤務時間、当直など

勤務時間は原則として午前8時30分からとする。土曜午後、日祭日は原則として休日体制とするが、術後管理、回診等の出勤が必要な場合がある。
当直は所属班の当直の副直を行い、指導医と共に病棟の当直研修とする。

専門研修プログラム

スケジュール概要(専門医になるための必要経験年数、認定試験等)

Ⅰ . 日本外科学会外科専門医制度による外科専門医の認定
  • スケジュール概要
    修練開始後満4 年以上経た段階→予備試験(筆記試験; 平成 18(2006)年度より開始)
    予備試験に合格後、修練開始後満5 年以上経て、規定の修練(下記概要参照)をすべて経験した段階→認定試験(面接試験; 平成19(2007)年度より開始)
    認定試験合格後、外科専門医として認定されます(有効期間:5 年)。
    (修練期間は修練開始登録を申請した後から算定されます)
  • 修練概要
    (1)診療経験
    認定試験(面接試験)までに修練実施計画に則り、本会指定施設または関連施設(指定施設群)において、以下の手術を行っていること。

    最低手術経験数 350 例
    術者として 120 例
    消化管及び腹部内臓 50 例 乳腺 10 例
    呼吸器 10 例 心臓・大血管 10 例
    末梢血管 10 例 頭頸部・体表・内分泌外科 10 例
    小児外科 10 例 各臓器の外傷 10 例
    鏡視下手術 10 例

    (2)業績
    認定試験(面接試験)までに日本外科学会が挙げた基準に則り、学術集会または学術刊行物に、研究発表または論文発表をしていること。

Ⅱ -a. 日本消化器外科学会による消化器外科専門医の認定
  • 申請者は、次の各号に定めるすべての資格を要する。
  • 日本国の医師免許を有すること。
  • 日本外科学会認定医(外科専門医)であること。
  • 継続3 年以上本会会員であること。
  • 臨床研修終了後、指定修練施設において所定の修練カリキュラムに従い、通算5 年間以上の修練を行っているとと。
  • 所定の診療経験を有すること。専門医修練カリキュラムⅠ(新)に示された手術については、指定修練施設における修練期間中に手術難易度・到達度別必須症例および必須主要手術の術者としての規定例教を含む450 例以上の経験を必要とする。
  • 所定の業績を有すること。消化器外科に関する筆頭者としての研究発表を6 件以上(論文3 編を含む)とし、対象となる業績は、「本会評議員審査のための業績基準」に定められた医学雑誌および学術集会に発表されたもので、資格認定委員会が判定する。
  • 所定の研修実績を有すること。専門医修練期間中に本会総会に 1 回以上および本会教育集会の全6 領域に出席し、総会は参加証で、教育集会は受講証によって証明できるものとする。
Ⅱ -b. 日本小児外科学会による小児外科専門医の認定
  • 通算7 年以上の外科医としての経験を有すること。
  • 申請時に3 年以上日本小児外科学会会員であること。
  • 日本外科学会専門医であること。
  • 研修指数が400 以上に達していること。
  • 研修月教が36 か月以上に達していること。
  • 筆頭著者である小児外科に関する研究論文、症例報告が各1 編以上あること。
  • その他の小児外科に関する論文が3 編以上あること。
  • 筆記試験に合格していること。
Ⅲ -c. 日本内視鏡外科学会による内視鏡外科技術認医の認定
  • 申請時に日本内視鏡外科学会会員であること。
  • 日本外科学会専門医あるいは指導医であるとと。
  • 胆嚢摘出術であれば50 例以上 (advanced surgery5 例を含む)、大腸・胃切除などであれば20 例以上を術者あるいは指導的助手として経験していること。(申請時より3 年以内に行われた症例)
  • 専門領域の内視鏡下のadvanced surgery を独力で完遂でき、これらの手術の指導ができること。
  • 本学会が並びに関連学会が主催する、あるいはこれらの学会が公認または後援する内視鏡外科に関するセミナーを受講していること。(本学会教育セミナーへの1 回以上の受講は必須)
  • 内視鏡外科手術に関する十分な業績を有すること。(申請時必要点数は合計12 点以上)

修練概要

診療経験(最低経験手術数等)

上記参照下さい。

業績

上記参照下さい。

関連研修科に関する情報

後期研修中の他科ローテーションは可能です。
救急医学、麻酔科、心臓血管外科、呼吸器外科、小児科などを考慮しています。
特に救急医学とは密接な関係があり専門研修中に口ーテー卜研修を予定しています。

ライフプラン

認定医・専門医取得に必要な年限(スケジュール概要を参考にして下さい)

最短の必要年限を要約すると、
必修研修(初期研修)2 年間を含む日本外科学会指定施設または関連施設における外科経験5 年間(最短5 年間)で日本外科学会外科専門医取得可能
最短6 年間で日本内視鏡外科学会技術認定医取得可能
最短7 年間で日本消化器外科学会消化器外科専門医あるいは日本小児外科学会小児外科専門医取得可能

注) 外科専門医としての修練を行うにあたっては、修練開始の登録の手続きを行う必要があります。修練期間(最短5 年間)の算定方法は次の2 つのどちらかのケースに分かれます(厚生労働省主導の卒後初期臨床研修期間満了後6 ヶ月以内に修練開始登録を行った場合に限り、卒後初期臨床研修の開始時まで遡って算定されるため)。

  • 医籍登録後2 年6 ヶ月以内に修練開始登録を行った場合、修練期間は医籍登録年月日から算定されます。
  • 医籍登録後2 年6 ヶ月を経て修練開始登録を行った場合、修練期聞は修練開始登録日から算定されます。

このほか、外科の中で自身が専攻する領域によって、日本乳癌学会認定医・専門医や日本甲状腺学会認定専門医制度があり、取得できます。