岩手医科大学医学部 外科学講座

下部消化管チーム

岩手医科大学病院の外観
下部消化管チーム

大腸癌の手術

岩手医科大学下部消化管チームの対象疾患の大多数は大腸癌です。大腸癌の手術では、がんの部位と進行度に応じて適切な手術を行うことが重要になります。私たちのチームは、合格率30%前後とされる日本内視鏡外科学会技術認定医3名を含む6人のスタッフで年間300件近くの全身麻酔下手術を行い、うち180例前後の初発大腸癌を手術しています。2025年は159例の初発大腸癌のうち88%を腹腔鏡手術あるいはロボット手術で行いました。近年ではロボット支援下手術の件数が増加しており、当院では、da Vinci Xi、 hinotori、 Hugoという3台の手術用ロボットを導入しており、今後はそれぞれの機種の特性を活かした手術方針を検討していきます。

初発大腸がん手術件数
結腸がん手術件数
直腸がん手術件数

直腸癌に対する肛門温存手術

直腸癌手術において、多くの患者さんが永久人工肛門とならないか不安になります。しかしながら直腸癌手術の命題はがんを取り残さないこと、「根治性」です。私たちは、根治性が十分に担保された場合には、肛門に近い直腸癌患者さんに対して超低位前方切除術や括約筋間直腸切除術などの肛門温存術式を提案させていただきます。他院で肛門温存不可能と診断された場合でも相談していただければと思います。
肛門温存術式を選択した場合には、手術後に吻合部(大腸がんを切除した後、残った腸管同士を繋いだ箇所)のトラブルを避けるために、一時的な人工肛門を造設します。術後に吻合部のトラブルがなく、一定の期間を置いて人工肛門を閉鎖する手術を行います。
しかしながら、肛門温存手術を受けた患者さんのなかには、頻便や便失禁が起きてしまい必ずしも術後の排便機能に満足できない方もいらっしゃいますのでご理解ください。

括約筋間直腸切除術

括約筋間直腸切除術(出典:患者さんのための大腸癌治療ガイドライン 2022年版)

拡大手術

局所進行の著しい大腸癌の患者さん、局所再発をきたした患者さんに対しても、根治のために他臓器合併切除を含めた拡大手術を提案させていただく場合があります。私たちはこのような拡大手術においても積極的に腹腔鏡手術・ロボット支援下手術を行っております。特に腹腔鏡下骨盤内臓全摘術に関しては保険収載された2024年より7例において安全に遂行できました。一方で、このような拡大手術は手術侵襲が非常に大きく、術後合併症や後遺症の頻度も高区なります。術後の生活の質が大きく低下する場合がありますので、患者さんの理解が得られるよう、術前には十分な説明を行わせていただきます。

遠隔転移に対する手術

大腸癌の遠隔転移・再発臓器としては肝臓、肺が多いとされていますが、遠隔転移・再発巣を切除することにより根治が得られる場合があります。当初は切除不能な遠隔転移であっても、化学療法が奏功し切除可能となる場合もあります。私たちはこのような肝転移や肺転移を有する患者さんに対して、患者さんの背景や希望を考慮し手術(肝切除、肺切除)を提案させていただく場合があります。肝転移については当科肝胆膵外科チーム、肺転移については呼吸器外科学講座へ手術を依頼しますが、いずれも内視鏡外科手術を積極的に行っております。

化学療法

大腸癌における化学療法は、①術後補助化学療法、②切除不能・再発大腸癌に対する化学療法、③術前化学療法の3つに大別されます。

術後補助化学療法

大腸癌に対する根治手術が得られた患者さんの再発を抑制する目的で行います。術後の病理組織検査でステージIIIと診断された患者さん、再発リスクが高いと思われるステージIIの患者さんが対象となります。治療期間は多くの場合、約6ヶ月となります。

切除不能・再発大腸癌に対する化学療法

初診の時点で遠隔転移などのため根治切除不能と診断された患者さん、根治切除後の再発と診断された患者さんが対象となり、化学療法の効果が得られている期間は治療を継続します。化学療法が奏功した場合には遠隔転移や再発巣でも根治切除可能となる場合があります(コンバージョン手術と言います)。

術前化学療法

腫瘍縮小や病勢のコントロールを図るために、原発巣の根治切除前に行う化学療法です。特に局所進行の直腸癌患者さんに対しては、化学療法に加え放射線治療を行う化学放射線療法、化学放射線療法の前後に化学療法を行うTotal Neoadjuvant Therapyが近年普及しつつあります。このような集学的治療により、直腸癌患者さんの中には永久人工肛門や手術そのものを回避できたという報告があります。治療内容や治療期間は患者さんにより大きく異なるため、導入に際しては十分に説明させていただきます。

大腸癌の化学療法においては新しい薬剤が開発・導入されており、専門性が高まってきております。私たちは原則として、これらの化学療法を術前や術後、再発時も一貫して自分達で治療させていただいております。化学療法に対する知識を日々アップデートし、定期的なカンファレンスで最適な治療内容を検討しております。薬剤部とも密に連携を図っており、2025年はのべ1904件の大腸癌化学療法を行いました。短期入院での化学療法も積極的に導入しておりますので、遠慮なくご相談ください。

炎症性腸疾患

当院消化器内科にはクローン病潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患のエキスパートが在籍し、多くの患者さんが治療されております。炎症性腸疾患は時に外科的治療を要する場合があり、私たちのチームは消化器内科と密に連携をとっております。炎症性腸疾患においても可能な限り低侵襲な腹腔鏡手術を選択しております。

そのほかの大腸疾患

家族性大腸腺腫症希少がん(神経内分泌腫瘍、消化管間質性腫瘍、悪性黒色腫など)、大腸憩室疾患など、市中病院では頻度の少ない疾患についてもすべて対応しております。また、婦人科癌における直腸合併切除なども私たちのチームで対応しております。